日中翻訳コンテスト  20122

           


 2012年2月の優秀答案当選者5名: 原明海、赤堀卓司、梅川史子、劉悦全、藤田江実

 

「吾輩は猫である2012−02」 :ふと気が付いて見ると書生はいない。たくさんおった兄弟が一疋(ぴき)も見えぬ。肝心の母親さえ姿を隠してしまった。その上今までの所とは違って無暗(むやみ)に明るい。眼を明いていられぬくらいだ。はてな何でも容子(ようす)がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。吾輩は藁(わら)の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。 ようやくの思いで笹原を這い出すと向うに大きな池がある。吾輩は池の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。別にこれという分別も出ない。しばらくして泣いたら書生がまた迎に来てくれるかと考え付いた。ニャー、ニャーと試みにやって見たが誰も来ない。そのうち池の上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる。腹が非常に減って来た。泣きたくても声が出ない。仕方がない、何でもよいから食物(くいもの)のある所まであるこうと決心をしてそろりそろりと池を左りに廻り始めた。どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりに這って行くとようやくの事で何となく人間臭い所へ出た。ここへ這入ったら、どうにかなると思って竹垣の崩れた穴から、とある邸内にもぐり込んだ。縁は不思議なもので、もしこの竹垣が破れていなかったなら、吾輩はついに路傍(ろぼう)に餓死(がし)したかも知れんのである。一樹の蔭とはよく云(い)ったものだ。この垣根の穴は今日に至るまで吾輩が隣家(となり)の三毛を訪問する時の通路になっている。 さて邸(やしき)へは忍び込んだもののこれから先どうして善(い)いか分らない。   (夏目漱石 続く)


 

俺是猫201202: 醒过劲儿来的时候,书生不在了。俺那么多的兄弟也一只也看不见了。俺那么重要的娘也不见影儿了。而且和以往的地方不一样的是这儿亮得慌。眼睛都睁不开。怎么也觉得怪怪的。试探着试探着俺就爬了出去,特疼。俺原来是从稻草上给扔到了小竹丛生的野地里了。好不容易从那野地爬出来的时候,对面有一个大水池子。俺在池子前坐下来想了想,该怎么整才好呢。也没想出点儿什么。后来,俺想,如果哭一会儿的话,书生是不是就能来呢。喵,喵,试着哭了两声,也没见谁来。不久后,风沙沙地轻轻拂过水面,太阳也下山了。俺太饿了,想哭都哭不出声来。没法子,只要是有吃的什么都行,俺决心要找到有吃的地方,慢慢顺着池子往左走。真难受,俺忍耐着饥饿,终于爬到了有人味儿的地方。俺想只要是爬进这里,终究有点什么法子吧,便从破了的竹篱的洞钻了进去。缘分真是不可思议,如果这个竹墙没破的话,俺可能就饿死在路边了。真是前世之缘。这个洞到现在也是俺拜访隔壁家的三毛猫的通道。话说回来,虽说是溜进了宅子,可不知打这儿以后是好运还是恶运呢。(夏目漱石  翻译: 原明海 凌焱)