日中翻訳コンテスト  20121

          


 

2012年1月の優秀答案当選者5名: 董維濤、橋本祐樹、藤田昭美、原明海、張超


「吾輩は猫である2012-01」 吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕(つかま)えて煮(に)て食うという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼の掌(てのひら)に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始(みはじめ)であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶(やかん)だ。その後(ご)猫にもだいぶ逢(あ)ったがこんな片輪(かたわ)には一度も出会(でく)わした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙(けむり)を吹く。どうも咽(む)せぽくて実に弱った。これが人間の飲む煙草(たばこ)というものである事はようやくこの頃知った。  この書生の掌の裏(うち)でしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗(むやみ)に眼が廻る。胸が悪くなる。到底(とうてい)助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
(夏目漱石 続く)

 

 


《俺是猫201201: 俺是猫,还没名儿。俺生在哪儿俺哪儿知道。只迷迷糊糊记得好像在又暗又湿的地方喵喵哭叫过。俺在那儿第一次见到人。而且后来听说那人可是人中最暴虐的种族−书生,后来还听说那书生还时不常把俺们抓起来煮着吃。不过那时俺脑子里什么也没有,也没觉着有什么好怕的。只是被他踮在手上刷的一声举起来的那一瞬间感到轻飘飘而已。在他的手掌上静下来后看到他的脸,这该是俺头一次看到的所谓人的脸吧。当时俺心里那种奇妙的感觉到现在还没忘。首先,本该是毛茸茸的脸却是光溜溜的,简直就像一个煮水铁壶。打那以后,俺见过的猫也够多的了,就是没见过那么凸凸凹凹的脸,看哪,脸的中央怎么凸得那么高,那儿还有洞呢,时不常冒着烟气,让我呛得不行,我打那时候才知道那就是人吸的一种叫香烟的东西。在这人的手心里正坐得舒舒服服的时候,俺以头晕目眩的速度动了起来。俺也不知道他在动还是俺在动,只觉得眼发K,恶心,好难受。正觉得没救了时,咚的一声眼前火星直冒…俺就只记得这些,当时到底发生了什么事儿我怎么也想不起来了。  (夏目漱石  俺是猫  翻译:董维涛)