2009年9月の優秀答案当選者5名: ★施栄濤(埼玉県志木市)、上田美恵子(大阪府豊能町)、山元史郎(愛知県半田市)、菊澤由香(福岡県福岡市) 「先生と私」の24: 今朝から昨夕のことが気にかかっている私は、途中でまたKを追窮しました。けれどもKはやはり私を満足させるような答えをしません。私はあの事件について何か話すつもりではなかったのかと念を押してみました。Kはそうではないと強い調子で言い切りました。昨日上野で「その話はもうやめよういと言ったではないかと注意するごとくにも聞こえました。Kはそういう点にかけて鋭い自尊心をもった男なのです。ふとそこに気のついた私は突然彼の用いた「覚悟」という言葉を連想し出しました。すると今までまるで気にならなかったその二字が妙な力で私の頭を抑え始めたのです。
Kの果断に富んだ性格は私によく知れていました。彼のこの事件についてのみ優柔なわけも私にはちゃんと呑み込めていたのです。つまり私は一般を心得たうえで、例外の場合をしっかりつらまえたつもりで得意だったのです。ところが「覚悟」という彼の言葉を、頭の中で何べんも咀嚼しているうちに、私の得意はだんだん色を失って、しまいにはぐらぐらうごき始めるようになりました。私はこの場合もあるいは彼にとって例外でないのかもしれないと思い出したのです。すべての疑惑、煩悶、懊悩、を一度に解決する最後の手段を、彼は胸の中に畳み込んでいるのではなかろうかとうたぐり始めたのです。(夏目漱石 続く) 訳文:《老师和我之24》:早晨开始一直挂念着昨晚那件事的我,在上学的路上又追问了K。然而K仍然不给我一个满意的回答。我试着诘问道:“你不打算对那件事说些什么吗?”“不打算说什么”,K语气强硬地一口回绝。他的话听上去又仿佛是在提醒我:“昨天在上野不是说过不要再说那件事了吗?”K是一个在这方面有着强烈自尊心的男子。一下子注意到这一点的我,突然联想起他曾经使用过的“觉悟”这一词汇。于是,迄今为止完全没放在心上的这两个字开始用奇妙的力量控制我的大脑。我非常熟悉K十分果断的性格。他仅仅对这件事优柔寡断的原因我也相当了解。也就是说我以为自己既了解他的一般状况,又掌握他的例外情况,因此曾自鸣得意过。但是,在脑海里将“觉悟”这个他说过的词回味了好几遍后,我的得意渐渐褪色,最后开始变得摇摆不定起来了。我觉得或许这次的情况对他来说可能也是一种例外。我开始怀疑是不是一下子解决所有疑虑、烦闷、懊恼的最终王牌正隐藏在他的内心深处呢。(夏目漱 未完待续 翻译者 施荣涛)
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