「先生と私」の10: Kの生返事は翌日になっても、その翌日になっても、彼の態度によく現れていました。彼は自分から進んで例の問題に触れようとする気色を決して見せませんでした。もっとも機会もなかったのです。奥さんとお嬢さんがそろって一日うちを空けでもしなければ、二人はゆっくり落ちついて、そういうことを話し合うわけにもいかないのですから。 私はそれをよく心得ていました。心得ていながら、変にいらいらし出すのです。その結果はじめは向こうからくるのを待つつもりで、暗に用意をしていた私が、折があったらこっちで口を切ろうと決心するようになったのです。 同時に私は黙ってうちのものの様子を観察してみました。しかし奥さんの態度にもお嬢さんの素振りにも、べつに平生と変わった点はありませんでした。Kの自白以前と自白以後とで、彼らの挙動にこれという差違が生じないならば、彼の自白は単に私だけに限られた自白で、肝心の本人にも、またその監督者たる奥さんにも、まだ通じていないのは確かでした。そう考えた時私は少し安心しました。それで無理に機会をこしらえて、わざとらしく話を持ち出すよりは、自然の与えてくれるものを取り逃がさないようにするほうがよかろうと思って、例の問題にはしばらく手を着けずにそっとしておくことにしました。(夏目漱石 続く) 译文:《老师和我之十》:即使到了第二天、第三天,K表现出来的还是那种含糊暧昧的态度。他丝毫没有露出自己将主动触及那个问题的神情。不过,也没有什么机会。因为如果不是太太和小姐一起出门一天的话,我和K两个人就不可能静下心来,慢慢地谈那个话题。这一点我心里很明白。虽然明白,却异常地焦躁起来了。结果,最初打算等对方开口而暗暗地做着准备的我,决心有机会的话,自己开口提出来。同时,我默默地观察了一下家里人的情况。然而,无论是太太的态度还是小姐的举止都和平常没有什么不同的地方。如果在K表白前和表白后,她们的举动并没有产生某种差异的话,那么他只是单单对我表白了,关键的本人和其监护人即太太确实都还没有得知此事。这样一想,我稍稍安心了一些。我想这样的话,与其勉强制造机会,不自然地提起话头来,还不如不放过自然赐予的机会为好,于是就决定暂且不提那问题,搁置一段时间。 (翻译者 施荣涛) |