日中翻訳コンテスト  2019年8

              

 


019年8月の優秀答案当選者3名:徳川広子 小林明寛 和田明菜  翻訳努力当選者3名 江川美帆  藤井佳奈  野村小枝子 

(江戸川乱歩 「怪人二十面相」の8): 人か魔か その午後には、羽柴一家総動員をして、帰朝の壮一君を、羽田空港に出むかえました。 飛行機からおりたった壮一君は、予期にたがわず、じつにさっそうたる姿でした。こげ茶色の薄がいとうを小わきにして、同じ色のダブル・ボタンの背広を、キチンと着こなし、折り目のただしいズボンが、スーッと長く見えて、映画の中の西洋人みたいな感じがしました。 同じこげ茶色のソフト帽の下に、帽子の色とあまりちがわない、日にやけた赤銅色の、でも美しい顔が、にこにこ笑っていました。濃い一文字のまゆ、よく光る大きな目、笑うたびに見える、よくそろったまっ白な歯、それから、上くちびるの細くかりこんだ口ひげが、なんともいえぬなつかしさでした。写真とそっくりです。いや、写真よりいちだんとりっぱでした。みんなと握手をかわすと、壮一君は、おとうさま、おかあさまにはさまれて、自動車にのりました。壮二君は、おねえさまや近藤老人といっしょに、あとの自動車でしたが、車が走るあいだも、うしろの窓からすいて見えるおにいさまの姿を、ジッと見つめていますと、なんだか、うれしさがこみあげてくるようでした。 帰宅して、一同が、壮一君をとりかこんで、何かと話しているうちに、もう夕方でした。食堂には、おかあさまの心づくしの晩さんが用意されました。 新しいテーブル・クロスでおおった、大きな食卓の上には、美しい秋の盛り花がかざられ、めいめいの席には、銀のナイフやフォークが、キラキラと光っていました。きょうは、いつもとちがって、チャンと正式に折りたたんだナプキンが出ていました。

 


訳文:(江戸川乱 「怪人二十面相」之八):是人还是妖魔  那天下午,羽柴全家总动员去羽田机场接衣锦还乡的壮一。下飞机的壮一,正如预料之中,飒爽英姿出现在大家面前,身穿焦茶色的双排扣西装,手臂下夹着同样颜色的外套, 整齐考究、裤线笔直, 给人挑高瘦削的印象,就像是电影上的洋人。焦茶色的礼帽下映出的脸庞也是和帽子差不多的被阳光晒成的古铜色,不过显得英俊,面露笑容。浓浓平直的双眉, 闪闪烁烁的大眼睛,一笑就露出的整齐浩齿。还有,上唇仔细修剪的仁丹胡, 他的形象看上去有一种说不出的怀旧情调。他,就和照片一样,哪里哪里,本人远比照片倜傥。和大家握手后,壮一上车,坐在父母中间。弟弟壮二和姐姐还有老近藤一起上了随后的汽车。壮一在汽车上从隔窗里凝视着前排的哥哥, 喜悦的心情涌上心头。回到家, 壮二被拥在大家的中心, 谈啊谈啊,不知不觉到了傍晚时分。餐室内, 妈妈精心准备的晚餐上桌了。崭新的台布下的大餐桌上,中心装饰着美丽的秋花花篮, 在围坐在餐桌的每个人的面前摆着银光峥峥的银餐刀和银餐叉。今天的餐桌和以往不同的是,每人的面前还有叠得整整齐齐的餐巾。(翻译:コ川广子)