「家(上)の4」:「三吉。」とお種は弟の方を見て、「田舎へ来て物を食べると、子供の時のことを思い出すでしょう。直樹さんやお前さんに色々食べさせたい物が有るが、追々と御馳走しますよ。お前さんが子供の時には、ソラ、赤い芋茎(ずいき)の御漬物などが大好きで……今に吾家(うち)でも食べさせるぞや。」 こんなことを言い出したので、主人も客も楽しく笑いながら食った。お種がここへ嫁(かたず)いて来た頃は、三吉も郷里の方に居て、まだ極く幼少(おさな) かった。その頃は両親とも生きていて、老祖母さんまでも壮健(たっしゃ) で、古い大きな生家(さと)の建物が焼けずに形を存していた。次第に弟達は東京の方へ引移って行った。こうして地方に残って居るものは、姉弟中でお種一人である。「お春、お前は知るまいが」とお種は久し振で弟と一緒に成ったことを、下婢(おんな)にまで話さずにはいられなかった。「彼(あれ)が修業に出た時分は、旦那さんも私もやはり東京に居た頃で、丁度一年ばかり一緒に暮したが……あの頃は、お前、まだ彼が鼻洟(はな)を垂らしていたよ。どうだい、それがあんな男に成って訪ねて来た――えらいもんじゃないか。」 お春は団扇で蠅を追いながら、皆なの顔を見比べて、娘らしく笑った。旧(むかし)からの習慣として、あたかも茶席へでも行ったように、主人から奉公人まで自分々々の膳の上の仕末をした。食べ終ったものから順に茶碗や箸を拭いて、布巾をその上に掩(かぶ)せて、それから席を離れた。 島崎藤村「家(上)の4」 2015年4月の優秀答案当選者5名: ★森川龍也、山本信弘、富田江美、劉麗君、江川美帆 《家之上之四》: “三吉”阿种看着弟弟说:“你回乡下吃什么的时候一定会回忆起儿童时代吧。我还有好多想让你和直树尝尝的好吃的呢,我接着做吧。不是吗,你喜欢吃芋头杆的咸菜…,咱家就有,来,你尝尝吧。”阿种一提起这样的话头,主人客人都乐呵呵地一边笑着一边吃起来。阿种刚嫁到这里时,三吉也还住在乡下,而且很小。那时,父母也都在,连老祖母也健在,那么古老的大家居然没有遭到火灾留传至今。以后,弟弟们搬到东京去了,留在乡下的姊弟中就只有阿种一人。“阿春你知道不?” 阿种和弟弟久别重逢的兴奋对女仆阿春也禁不住流露出来。“三吉出去学徒的时候,我和丈夫也还在东京,我们一起生活过正好一年…,那时,他还挂鼻涕呢,怎么样,成了这么一个小伙子回来,太棒了!”阿春用团扇ー着苍蝇,顺次看着大家的脸,姑娘家家般地笑着。照老习惯,就像在茶席上那样,从主人到仆人,饭后自己收拾自己面前的小饭桌。大家分别按吃完的顺序用怀纸擦干净自己的碗筷,再用餐布盖在上面,依次退席了。(翻译者:森川龙也)
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