日中翻訳コンテスト  2013年12月

              


2013年12月の優秀答案当選者5名: 許家涛 伊藤佐和子福井正弘、武田佐知子、上村亜矢子 


「舞姫の2」: 嗚呼(ああ)、、ブリンヂイシイの港を出でてより、早や二十日あまりを経ぬ。世の常ならば生面(せいめん)の客にさへ交り(まじはり)を結びて、旅の憂さを慰めあふが航海の習(ならひ)なるに、微恙(びやう)にことよせて房(へや)のうちにのみ籠(こも)りて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨に頭(かしら)のみ悩ましたればなり。此(この)恨は初め一抹の雲の如く我(わが)心を掠(かす)めて、瑞西(スイス)の山色をも見せず、伊太利(イタリア)の古蹟にも心を留めさせず、中頃は世を厭(いと)ひ、身をはかなみて、腸(はらわた)日ごとに九廻すともいふべき惨痛をわれに負はせ、今は心の奥に凝り固まりて、一点の翳(かげ)とのみなりたれど、文(ふみ)読むごとに、物見るごとに、鏡に映る影、声に応ずる響の如く、限なき懐旧の情を喚び起して、幾度(いくたび)となく我心を苦む。嗚呼、いかにしてか此恨を銷(せう)せむ。若(も)し外(ほか)の恨なりせば、詩に詠じ歌によめる後は心地すがしくもなりなむ。これのみは余りに深く我心に彫(ゑ)りつけられたればさはあらじと思へど、今宵はあたりに人も無し、房奴(ばうど・ボーイ)の来て電気線の鍵を捩(ひね)るには猶(なほ)程もあるべければ、いで、その概略を文に綴りて見む。 (森鴎外 舞姫 第2回)

《舞姫之二》呼! 从布林迪西港起航以来,已有20多天了。按理,旅途中萍水相逢的旅客也会彼此交往以慰旅途的寂寞,是出航的习惯。而我却托辞身体有恙,宅居在客里,很少与同行的人交,整天被旁人所不知的恨事而苦恨事最初像一抹浮云掠我的心,使我既无心欣瑞士的山色,也无心留意意大利的名古迹。而后我悲观厌世,人世之无常,使我身之痛,在在我的内心的深凝固成一片影。然而阅览,睹佳人物,惨痛如影随形,响而声,勾起我无限的怀旧之情,无数次使我心痛。啊!绵绵此恨如何才能消融呢?倘若是憾,可以借歌以抒胸中的郁。只有件事深深地烙在我心无法发遣。今夜四周无人,距侍者熄灯有一段时间,且我把件事的概略述下来吧!(森鸥外 舞姬第二回 翻译: 许家涛) 

 訳文:《舞姬之二》啊,从布林迪西(Brindisi)海港出发后,已经过了二十多天了。在航海中,一般总会与陌生之客交流来互相消除旅途中的无聊。可是我以身体不舒服为理由,关在舱室里,很少与旅伴说话。这是因为一个懊悔让我悄悄地苦恼。这个懊悔像一朵云划过天空似地掠过我的心,不让我欣赏瑞士风景,也不让我把意大利的名胜古迹留在心上。然后,让我厌世叹惋,甚至让我苦痛得好像一天九次肠子翻个似的。现在它凝固在我心的深处,变成了一点儿阴影。但是每次我看书看东西时,它像映在镜子上的影子似的,也像应声回响似的,还是叫我唤起无限的怀旧之情,叫我多次伤心。啊,怎样能够消除这个懊悔呢?若是其他懊悔的话,吟诗咏歌后我会感到爽快的。不过,这个懊悔可深深地扎了我的心,所以我不会感到爽快。今天晚上,四周无人。而且离服务员巡回关灯还有时间。那么,我试图把它的梗概写成文章吧。(森鸥外 舞姬第二回 :伊藤佐和子)