日中翻訳コンテスト  2008年1月

               

 


2008年1月の優秀答案当選者5名: 森岡洋子(滋賀県近江八幡市)施栄濤(埼玉県志木市)、山田藤江(静岡県伊東市)藤田健史(山口県長門市)小西めぐみ(岩手県盛岡市)

「先生と私」の4:Kはなかなか奥さんとお嬢さんの話をやめませんでした。しまいには私も答えられないような立ち入ったことまできくのです。私はめんどうよりも不思議の感に打たれました。以前私のほうから二人を問題にして話しかけた時の彼を思い出すと、私はどうしても彼の調子の変わっているところに気がつかずにはいられないのです。私はとうとうなぜ今日に限ってそんなことばかり言うのかと彼に尋ねました。その時彼は突然黙りました。しかし私は彼の結んだ口もとの肉がふるえるように動いているのを注視しました。彼は元来無口な男でした。平生から何か言おうとすると、言う前によく口のあたりをもぐもぐさせる癖がありました。彼の唇がわざと彼の意志に反抗するようにたやすく開かないとことに、彼の言葉の重みもこもっていたのでしょう。いったん声が口を破って出るとなると、その声にはふつうの人よりも倍の強い力がありました。彼の口もとをちょっと眺めた時、私はまた何か出てくるなとすぐ感づいたのですが、それが果たしてなんの準備なのか、私の予覚はまるでなかったのです。だが驚いたのです。彼の重々しい口から、彼のお嬢さんに対する切ない恋を打ち明けられた時の私を想像してみてください。私は彼の魔法棒のために一度に化石されたようなものです。口をもぐもぐさせるはたらきさえ、私にはなくなってしまったのです。(つづく)(夏目漱石)


訳文:《先生和我》之四: :唠唠叨叨地谈起太太和她女儿的事儿。甚至于问我一些我也不能回答的她们私生活方面的问题。虽然我并不感觉麻烦,但我感到很奇怪。我想起我以前对他说起太太和她女儿的事儿的时候的他的态度,和现在比起来显然有变化。我终于问他今天为什么一直说那样的话。那时,他突然缄默了。我注视到他闭上的嘴边的肌肉在抖动。他原本是一个沉默寡言的人。他要说什么的时候,在说什么之前他的嘴总是一张一合。这是他的癖性。他的嘴好像抵抗他的意志似的不情愿动。可能由于他的话都是那么重,一旦冲破他闭着的嘴出来的声音却带着一般人一倍的力量。当我看到他的嘴边的时候,我马上就觉得他要再说什么。可是完全不能预想到他要说什么。所以我非常吃惊了,因为他向我吐露了他对小姐的执着的恋情。请想像那时候的我的动摇吧。犹如他挥动魔术杖把我变成了化石,我连嘴一张一合的机能也没有了。(翻译者 森岡洋子)

訳文:《先生和我》之四:怎么也停不下关于太太和小姐的话题来。到最后竟问到我也回答不了的一些刨根问底的事情上来了。与其感到麻 ,不如我被一不可思的感倒。想起以前总是由我主动向他提起太太和小姐话题的事,不禁觉得他现在的样子怪怪的。,今天尽说这这时,他突然沉默了。但我注意到他紧闭的嘴角边的肉在颤动着。他本是个不爱说话的男子。平素他有一个么时,张嘴前腮帮子像嚼什么似地先动起来的习惯。他的嘴唇仿佛故意违背他的意志似地不轻易张开,也大概是由于他话语的份量而说不出来声来吧。一旦音破口而出,那声音有着比普通人一倍的力量。我看了他的嘴角一眼,就马上感觉到又有什么话要跳出来了,但他这样腮帮子的蠕动究竟是为说什么作准备呢? 我一点也没有预感。所以我大吃了一惊。请各位想象一下,从他那张不轻易张开的口中听到对小姐无法排谴的爱的表白时的我似乎被他的魔法棒点中似的一下子化成了石头。我甚至连嘴角动一动的工夫都没有。(翻译者 施荣涛)