2017年11月の優秀答案当選者3名:★岡本洋子、合田雅子、尾崎直子。翻訳努力当選者3名:山本多恵子、長須賀真一、江川美帆
「夏目漱石
坊っちゃんの11」: 何だか二階の楷子段の下の暗い部屋へ案内した。熱くって居られやしない。こんな部屋はいやだと云ったらあいにくみんな塞がっておりますからと云いながら革鞄を抛り出したまま出て行った。仕方がないから部屋の中へはいって汗をかいて我慢していた。やがて湯に入れと云うから、ざぶりと飛び込んで、すぐ上がった。帰りがけに覗いてみると涼しそうな部屋がたくさん空いている。失敬な奴だ。嘘をつきゃあがった。それから下女が膳を持って来た。部屋は熱つかったが、飯は下宿のよりも大分旨かった。給仕をしながら下女がどちらからおいでになりましたと聞くから、東京から来たと答えた。すると東京はよい所でございましょうと云ったから当り前だと答えてやった。膳を下げた下女が台所へいった時分、大きな笑い声が聞えた。くだらないから、すぐ寝たが、なかなか寝られない。熱いばかりではない。騒々しい。下宿の五倍ぐらいやかましい。うとうとしたら清の夢を見た。清が越後の笹飴を笹ぐるみ、むしゃむしゃ食っている。笹は毒だからよしたらよかろうと云うと、いえこの笹がお薬でございますと云って旨そうに食っている。おれがあきれ返って大きな口を開いてハハハハと笑ったら眼が覚めた。下女が雨戸を明けている。相変らず空の底が突き抜けたような天気だ。道中をしたら茶代をやるものだと聞いていた。茶代をやらないと粗末に取り扱われると聞いていた。こんな、狭くて暗い部屋へ押し込めるのも茶代をやらないせいだろう。見すぼらしい服装をして、ズックの革鞄と毛繻子の蝙蝠傘を提げてるからだろう。田舎者の癖に人を見括ったな。一番茶代をやって驚かしてやろう。おれはこれでも学資のあまりを三十円ほど懐に入れて東京を出て来たのだ。汽車と汽船の切符代と雑費を差し引いて、まだ十四円ほどある。みんなやったってこれからは月給を貰うんだから構わない。田舎者はしみったれだから五円もやれば驚ろいて眼を廻すに極っている。 (夏目漱石 小爷之11)不知怎的,女仆把我领到了二楼阶梯下角落的一间昏暗的房间。里面热得叫人呆不下去。我说:“这个房间不行。”女仆一边应道:“真不巧,所有的屋子都已经满了。”,一边把我的帆布包扔下,走出去了。没法子,我只好进了房间,出着汗忍下去。女仆跟着进来对我说:“去洗澡吧。”我扑通一声扎进浴池后马上上来了。在回房间的途中,我窥视着其他房间,发现还有不少凉快的房间空着。我心里说:真是个没礼貌的撒谎家伙。女仆送来了饭菜。房间虽然非常热,但饭菜的味道比寄宿舍的好吃多了。女仆一边伺候我一边问:“您从哪里来的?”我回答说:“从东京来。”。于是她说:“东京是个好地方”。“那当然不用说了”我回答说。女仆收拾好餐具回厨房后,我听到了厨房里大声的笑声。真是无聊,我很快就寝,却好不容易入睡。不但房间里闷热,而且旅馆里吵吵闹闹,吵闹声比寄宿舍大五倍。迷迷糊糊地刚睡着的时候我梦见了阿清。她用箭竹叶包着越后的箭竹糖大口大口地吃着,我说:“箭竹叶有毒,别吃为好。”她边说着:“不,箭竹叶就是药。”边香甜地吃。我吃惊地张开大口哈哈笑着的时候从梦里醒过来了。女仆打开护窗版,依然是万里无云的天气。我听说过旅途中要给小费,否则要被慢待。看来把我塞进这么狭小、昏暗的屋子的理由就是如此吧。我穿着简陋的服装,带着帆布包和布伞,真是乡下人的势利眼。我真想付一笔让他们大吃一惊的小费,其实我带着三十多圆剩下的学费从东京出来。扣除火车票、轮船票和杂用后还留下十四多圆。都拿来付小费我可不在乎,今后我可要领月薪了。乡下人都是小气鬼,给他们五圆的话,肯定会惊讶得昏过去吧。(翻译者:冈本洋子 凌焱) |