2017年7月の優秀答案当選者3名:★西尾直美、田村暁子、周庭秋。翻訳努力当選者3名:江川美帆、吉岡美紀、森明美 「夏目漱石
坊っちゃんの7」: この甥は裁判所の書記でまず今日には差支えなく暮していたから、今までも清に来るなら来いと二三度勧めたのだが、清はたとい下女奉公はしても年来住み馴れた家の方がいいと云って応じなかった。しかし今の場合知らぬ屋敷へ奉公易えをして入らぬ気兼を仕直すより、甥の厄介になる方がましだと思ったのだろう。それにしても早くうちを持ての、妻を貰えの、来て世話をするのと云う。親身の甥よりも他人のおれの方が好きなのだろう。 九州へ立つ二日前兄が下宿へ来て金を六百円出してこれを資本にして商買をするなり、学資にして勉強をするなり、どうでも随意に使うがいい、その代りあとは構わないと云った。兄にしては感心なやり方だ、何の六百円ぐらい貰わんでも困りはせんと思ったが、例に似ぬ淡泊な処置が気に入ったから、礼を云って貰っておいた。兄はそれから五十円出してこれをついでに清に渡してくれと云ったから、異議なく引き受けた。二日立って新橋の停車場で分れたぎり兄にはその後一遍も逢わない。 おれは六百円の使用法について寝ながら考えた。商買をしたって面倒くさくって旨く
出来るものじゃなし、ことに六百円の金で商買らしい商買がやれる訳でもなかろう。よしやれるとしても、今のようじゃ人の前へ出て教育を受けたと威張れないから,つまり損になるばかりだ。資本などはどうでもいいから、これを学資にして勉強してやろう。六百円を三に割って一年に二百円ずつ使えば三年間は勉強が出
来る。三年間一生懸命にやれば何か出来る。それからどこの学校へはいろうと考えたが、学問は生来どれもこれも好きでない。ことに語学とか文学とか云うものは真平ご免だ。新体詩などと来ては二十行あるうちで一行も分らない。どうせ嫌いなものなら何をやっても同じ事だと思ったが、幸い物理学校の前を通り掛ったら生徒募集の広告が出ていたから、何も縁だと思って規則書をもらってすぐ入学の手続きをしてしまった。 「夏目漱石 少爷之七」:阿清的这个侄子是法院的书记,他现在过着什么也不缺的日子,他再三劝阿清:想来的话就来吧。不过那时阿清想,哪怕是去做女佣也还是住惯了的家好而没有答应他。但是,如今,这种情况下,与其改变心情去不认识的人家侍奉人还不如去麻烦侄子吧。尽管如此,阿清还是对我说:你早点有自己的家,娶上妻子,我来侍奉你什么的。看来,阿清比起自己亲生的侄儿来更喜欢我吧。哥哥去九州前两天来我的宿舍,拿出600块对我说:这笔钱你可以拿去做买卖的本钱,或者做学习的学资,都随你的便。条件就是今后不管你了。哥哥这样做我很佩服他。其实就是没有这600块我也并不为难,不过我敬佩他那没有先例的淡泊处置方式而谢了他,接下了钱。哥哥然后再给我50块说:这笔钱给阿清,我欣然同意了。两天后,我们在新桥的停车场分手了,以后再也没有见过面。那天以来我连睡觉也在考虑怎么用那600块。做买卖吧既麻烦又没有自信。况且区区600块也没有做一笔像模像样生意的道理。即使做生意,一个并没有受到教育的我也不能理直气壮站出来,不就等于干吃亏吗。做本钱的话什么时候都可以,还是做学资去学习吧。600块除以3,一年200块可以学习三年。三年努力学习的话能学出什么呢? 再想想去哪儿的学校好呢? 我不是一个生来就喜欢做学问的人,特别是语学呀文学什么的就饶了我吧。新体诗说来有20行,我可一行也不懂。不管怎么说,讨厌的事儿就是讨厌的事儿都差不多。一天。幸好我在经过物理学校前面的时候,看到了招生广告。我顿时感到有什么缘分吧。就拿到入学规则书,办好了入学手续。(翻译:西尾直美) |