これは被葬者の顔面にかぶせるものである。顔の形に似せて、額片、印堂片、上下頬片、中頬片、上下頷片、上下唇片、耳片、唇罩の計18点から構成されている各玉片の厚さは2.9cmで、各玉片の内側の下部にある稜線と鼻革の縁のところに斜めに細い孔があけられており、綴るのに便利なようにしている。鼻罩以外の玉片は加飾はされておらず、つくりは精緻で、線は自然で美しい。特に鼻罩は稀にしかみないもので、ひとつの玉石を彫刻してつくられており、全体はアーチ状をした三角錐の形をしている。内側は彫りこまれて空洞となっている。両側面にはそれぞれ透彫りにされた5組の幾何学文様が施されており、その隙間は細い雲雷文でうめられている。底面には透彫りされた三角形の「鼻孔」が2つある。この種類の玉覆面は貴重な例であり、これまでに発見された古い玉の形状をそのまま利用し、具体的な顔の各部に見立てて顔面を構成した西周時代以降の玉覆面とは異なり、古い玉に加工改造を施して各部分をつくったものである。 玉覆面の出現は西周時代に遡り、春秋戦国時代を経て前漢時代に至るまで4O以上の例が発見されている。そのうち最も完全なものがこの双乳山1号漢墓より出土したのである。 |